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渡辺哲也氏 インタビュー

TVアニメのCGディレクターから3Dプリントまで幅広く活躍されている渡辺哲也氏にお話を伺いました。

渡辺哲也
わたなべ てつや

岐阜県出身
長年TVアニメのCGディレクターとして活躍し、近年では、3Dプリントの世界にはまり、3D PRINT CONTEST 05にて最優秀を受賞

LightWave 3D クリエイターズウェビナー Vol.2 「LightWave 3D からの3Dプリント出力ワークフロー」に登壇いただきました。
本セミナーのアーカイブを公開しておりますので併せてご覧ください。



自己紹介をお願いいたします。

渡辺哲也と申します。
仕事は映像クリエイターで、20数年ぐらいLightwaveなどを使ってTVアニメのCGディレクターをしています。
代表的な作品は、コードギアスシリーズペルソナ4などのTVアニメの3Dディレクターです。


LightWave3Dを使い始めたのはいつごろでしょうか?
また、そのきっかけを教えてください。

1993年12月25日のクリスマスの日に買ったので憶えています。それから使っていますので、今年で27年目になります。
バージョンはAMIGA版のバージョン3.0か3.5ぐらいだったと思います。

LightWaveに出会ったきっかけは、1992年くらいだったと思いますが、ログインか何かの雑誌にウゴウゴルーガを作っているのはLightWaveだったかAMIGAだったかは忘れてしまいましたが、掲載されているので初めて知りました。当時インターネットとかも無かった時代だったので、毎月発売される雑誌の中でAMIGAやLightWaveの文字を探して読んでいるうちに、名古屋のロッキンというショップでAMIGAを扱っているという事を知り、直接ロッキンへ行って、LightWaveを見せてもらい、借金して買いました。笑


最近では、どのような作品に、どのような役割(担当)で携わっておりますでしょうか?

最近では株式会社サブリメイションさんで、宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たちのアニメーションやドラゴンズドグマのアニメーションなどに関わりました。
コードギアスシリーズペルソナ4では、デザインからモデリング、アニメーションまで一通りをおこなっていました。
宇宙戦艦ヤマト2202では、1カット丸々制作していました。 モデリングデータとコンテをもらって、アニメーションからエフェクト、そしてコンポジットまですべてを任されていました。


数々のTVアニメや劇場アニメに携われていますが、制作時に注意されていることはありますか?

現場によって求められるクオリティが違うので、求められている役割を果たすようにしています。
時間を使ってでもクオリティを求められる現場もあれば、スピードや低コストを求められる現場もありますので、こだわらない方がよければこだわらないし、こだわって欲しい時はこだわっています。
臨機応変にやらないと、どうしてもアニメの仕事は現場によって全然違うので、そういう難しさはありますね。


個人制作でも活躍されていますが、どんな活動をされてますでしょうか?

もともと個人制作出身で、20数年前に自主制作アニメーション超獣ロボ リューセイバーを作り、それがコンテストで賞を受賞してプロとなり、TVアニメの仕事をするようになりました。
最近ではオリジナルのデザインのキャラクターやメカなどを3Dプリントして楽しんでいます。
いろいろな方にも、3Dプリントの楽しさを紹介していきたいと思っています。


いつくらいから3Dプリントを始められたのでしょうか?

3Dプリントを購入したのは2013年です。
ただ、CGクリエイターになる前に、最初に就職した会社で3DCADとマシニングセンタを使って切削加工で工業製品の試作の仕事をしていたので、以前から3Dプリンタに近いような仕事はしていました。


先日、3D PRINT CONTEST 05で最優秀賞を受賞されたとお聞きしました。
これはどのようなコンテストで、どのような作品で受賞されたのでしょうか?

3D PRINT CONTESTは、FULL DIMENSIONS STUDIOさんと経済産業省 近畿経済産業局さんが主催している3Dプリントのコンテストです。 この3D PRINT CONTESTは、3Dプリントの可能性を開拓する目的で工業製品やアクセサリなどの部門もあるコンテストです。おそらく日本で一番歴史のあるコンテストだと思います。
僕はエンタメ業界の人間なのでオリジナルで作った『サイソルジャー』というフィギュアで応募し、出力部門で最優秀賞を受賞したというのは非常に光栄なコトだと思っています。


3D PRINT CONTEST 05に応募されたきっかけは何だったのでしょうか?

サイソルジャー』というオリジナルのメカをLightWaveで作って、3Dプリントで出力したデータを配布している時に、ちょうど3D PRINT CONTESTの募集を見つけて応募したのがきっかけです。


3Dプリントをおこなう際のモデルの作り方で気をつけていることはありますでしょうか?
また、出力時のコツや注意事項があれば教えてください。

デザインが疎かにならないように、モデリングしてからレンダリングで1枚静止画を出すところまでは映像制作と同じです。
モデリング作業においては、特に3Dプリント用だということを意識してデザインとかモデリングしないように心がけています。
通常、アニメだと静止画をクライアントに提出してチェックしてもらいますが、3Dプリントの場合は、自分自身で3Dプリント用に改造するというような作業になります。

具体的には、3Dプリンタに出力すると、フラットシェーディングになってしまうので、面をキレイにするために細かく分割するとか、3Dプリントは三角ポリゴンに変換しないと出力できないので調整するとか、あと、形状に穴が空いてたりしても出力できないので調整しています。


サイソルジャー』を3Dプリント出力する際に苦労された点や工夫された点をお聞かせいただけますか?

たくさんトライアンドエラーはしました。完成まで半年くらいかかりました。
特に大変だったのが、LightWaveでの作業というよりは、3Dプリンタに出力した時に思ったように出力されないことが多々あり、その都度LightWaveの方で調整する必要がありました。
また、3Dプリンタで出力してみると、強度が足りなくて折れてしまったりしたので、デザインを改めて見直したりする必要がありました。


映像用のモデルと3Dプリント用でモデルの作り方の違いはありますでしょうか?
もし違いがあれば具体的にどこが違うのかを教えていただけますでしょうか?

一つ前の回答と同じになるのですが、3Dプリントの場合、LightWaveのスムージングの設定が無視されてしまうのでポリゴンを増やさないといけないところや、可動するところがあれば、ネジ穴を作ったりと可動できるように作ったりしなければいけないところです。
映像制作の場合は、フォトショップやアフターエフェクト等のコンポジットでごまかすことはできますからね。


3Dプリントの場合は、映像の後処理のようなごまかしができないのですか?

ごまかす所はごまかしていますが、ごまかす所が違っています。
例えば、出力してみたらイメージと違うところがあるんですよ。ロボットの肩にトゲをつけてみたりすると、位置とか大きさに気に食わない場合があると、小さくしたり大きくしたりするのにブーリアンをおこなってしまうと、後で調整ができなくなってしまうので、本当はブーリアンで組み合わせないといけないのですが、トゲを食い込ませる形で後から調整できるようにしています。


何台くらい3Dプリンタをお持ちなのですか?

7台ですね。
先日受賞したコンテストでもらったプリンタを合わせて7台です。


用途によって3Dプリンタの種類は変えていますか?

普段は20万円ぐらいプリンタをメインで使用しています。
それ以外にも、60万くらいする光造形の3Dプリンタや高級機とエントリーモデル、また出力タイプも光造形用とFDMの2種類も持っているのですが、『サイソルジャー』に関して言えば、3Dプリンタを流行らせようと思い『サイソルジャー』のデータの配布を考えていたので、データの出力に値段の高いプリンタが必要になるのでは流行らないと思ったので、データ配布のために、価格的にお求めしやすいフラッシュフォージの3Dプリンタを使用しました。


3Dプリントに出力する時はLightWave以外のツールも使っていますか?

ZBrushも使っています。
基本はLightWaveで作業していて、ZBrushは調整用として使うことが多いです。
3Dプリントのサービスによっては、ワンスキンのデータで出力しなければならないので、ワンスキンのデータにするために、ZBrushのダイナメッシュでワンスキンにして出力しています。


3Dプリントのモデルを作成するにあたり、LightWave3Dのよく使う機能を教えてください。

モデリングは基本機能を使っていますが、可動部や接合部をモデリングする時はブーリアンを良く使います。
ブーリアンは、3rd Powersさんから発売されているプラグインMeta Meshも使ってブーリアンを使いわけています。


LightWaveを使い続けている理由を教えてください。

僕の場合は、長く使っていて、ずっと付き合っているのでというのが一番大きいです。
自分一人で仕事を受注して納品していた時には、クライアントなどから「LightWaveでは困るんです。」ということも言われなかったですし、「クオリティが足りないです。」ということも一切なかったので、ソフトを変える必要もなかったですね。


皆さんへのメッセージをお願いします。

LightWaveとか3Dソフトを使える方は、3Dプリントを趣味にするのをオススメします。
今はそこまでお金はかかりませんし、可能性が広がる楽しい趣味なので是非チャレンジしてみてください。


本日はありがとうございました。