株式会社ゴンゾは、1992年9月 新進気鋭のクリエーター達と村濱 章司氏の4人で、映像制作グループ「ゴンゾ」結成、有限会社ゴンゾを設立、そして1997年7月ゴンゾ初の本格アニメーション「青の6号」の制作が開始され、そこでLightWave 3Dが本格的に導入されました。その2Dと3Dを融合させた絵作りは、国内外共に多くのファンを魅了しています。

以後「ヴァンドレッド」、「戦闘妖精雪風」、「LAST EXILE」、「爆裂天使」、「SAMURAI 7」、「巌窟王」、「トランスフォーマー ギャラクシーフォース」へと続き、LightWave 3Dと共に数々の作品が生み出されております。今回は株式会社ゴンゾに訪問して、白井氏からゴンゾの秘密を伺いました。

 

D-STORM (以下DS): 白井氏ご自身と、GONZOの簡単なプロフィールをお聞かせください。

白井: GONZOとしては、来年で15周年となります。会社が設立されてから半分の期間も(在籍して)いませんね(笑) 私は入社して約6年ほど経ちます。入社したときは、ちょうど「青の6号」の1巻が発売し出したところでした。ちょうど入社面接の際にその作品やセガ・サターンのゲーム、「マクロス」のムービーを見せてもらったのを覚えています。入った当時のデジタル部3DCGIの部署は、当時チーフだった鈴木朗さんを含めて6・7人しかいませんでした。現在は、全体で40人弱までに増えています。それで年間5・6本のタイトルをデジタル部3DCGI全体で回しています。

白井 宏旨氏白井 宏旨氏プロフィール:
株式会社GONZOのデジタル部3DCGIセクションにチーフディレクターとして在籍中。
「青の6号」、「メルティランサー」、「ヴァンドレッド」、「トランスフォーマー ギャラクシーフォース」等々のタイトルでモデリング及び3DCGアニメーションスタッフ、そして「PEACE MAKER 鐵」、「戦闘妖精雪風」等々のタイトルで3DCGIディレクターとして参加した後、現在「ブレイブ ストーリー」で3D監督として制作参加中。

 

DS: 今現在、GONZOには何名くらいのスタッフの方が制作に関わっているのでしょうか?

白井: 全体では200弱くらいのスタッフが関わっています。青の6号の時代は、まだ80人ぐらいだったと思います。

DS: 現在の状況は?

白井: 「雪風」終了後、映画「ブレイブ ストーリー」の制作に入っています。そこでは3D監督をしています。私自身はLightWave 3DやMaya等を中心にいろいろなソフトを使用してます。 LightWave 3Dは主にモデリングやエフェクト作成等に使用してます。


戦闘妖精雪風

DS: 「青の6号」ではLightWave 3D Ver.5.6を使用されていたと伺いましたが、それまでご自身としては何かソフトウェアを使用されていましたか?

白井: Alias Power Animatiorを使用していました。GONZOに入社後、GONZOの3DのメインツールがLightWave 3Dでした。それが使用することになったきっかけです。それ以来ずっと使い続けています。

DS: LightWave 3D操作感などに感想があればお願いします。

白井: 長年使い慣れているので、主観的ではありますが、LightWave 3Dが一番使えるツールだと考えるタイプの人間になってしまったようです(笑)。

他のソフトと比較するとキャラクターアニメーションが弱かったり、特有のクセがあるという人もいますが、6年も使っていると、慣れているのと、このソフト自体のレスポンスが早いのも有って、結局一番速く仕上がります。また使ったひとは、大抵の方々からは、良いツールだという答えを伺います。向かっている絵に対して、ダイレクトに到達しやすく、その反面、あきらめも早くつく(笑)。

単純にロボット、メカ、戦闘ものをやるときは、現在のところは一番イメージに近いものができると思っています。また「雪風」に関しては、LightWave 3Dがなければ、あそこまでできなかったと思っています。「雪風」のキャラクターである飛行機等々のメカ関係は、基本的に三次曲面が多く、ポリゴン数が一機あたり数十万以上にまでふくれあがるので、それをアニメーション付けして、最終画像にまで落とし込む事は、他のツールでは難しい面も多かったと思います。エフェクトの質感等々もアニメライクに仕上げる、という部分でも、LightWave 3Dはとても有効でした。

DS: GONZOとしてツール(LightWave 3D)の検証を行なっていますか?

白井: 毎回の作品がそのまま検証素材なのではないかと(笑)。
LightWave 3DはこれまでのGONZOの作品を大きく支えてくれたソフトということで、実証されているとおもいます。

DS: GONZOでLightWave 3Dを使用した作品はどのようなものがありますか?

白井: 全部ですか?いっぱいありすぎてわかりません。ほんの少し使った、というのも入れると、GONZOの作品の約7割以上は使用していると思います。

戦闘妖精雪風DS: 作品に3DCGを使う頻度はどれくらいですか?

白井: だいたい30分フォーマットで多くて3分の1です。自分は制作に直接タッチしていませんが、去年制作された「SAMURAI 7」や「爆裂天使」等はスケジュールや3Dスタッフの人数等を考慮に入れて、3DCGのシーンの総量を何度も打ち合わせて調整していたと思います。各話、または2話に1回、30カットや50カットといった具合に盛り込んでいき、作業量を確定していきました。

しかし「トランスフォーマー」は・・・、それまでのメカはキャラクターが乗り込むまで画面に出てこないものだったのですが、「トランスフォーマー」ではメインキャラクターが3Dなんですよ。彼らは主人公と一緒に行動するし、いろんなところに出没するし、必ず画面の中に入ってこようとする。(笑) 結果、3DCGIのパートがとても多くなりました。私自身は立ち上げまでしか関われませんでしたが、聞いたところでは、200から280ものカット数になったとのことです。つまり9割ぐらいは、なにかしらに3DCGが出てくることになります。

DS: 「トランスフォーマー ギャラクシーフォース」にはLightWave 3D以外の3Dツールを利用しましたか?

白井: 制作開始時から、LightWave 3D 1本だけで行なうことを決めていました。当時は特にキャラクターのモデリングを中心に進めていましたが、その数は約40体におよびました。3DCGIの制作には社内スタッフが常時10人ほどいましたが、毎話数ともにカット数が多いので、全然人数的には足りませんでした。そのため、3DCGIのカット制作の多くに関しては、取引先に制作を委託し、上がってきたものを社内で演出や調整をするといった手法で、制作していました。最初から最後まで制作に関わった取引先プロダクション等は7社、スポットや話数単発でお手伝いいただいた取引先も含めると13社ほどになります。

DS: 3DCGの制作において、人員の確保が難しいとよく聞きますが、LightWave 3Dの場合はそこの問題が少ないと思いますが、いかがでしょうか?

白井: 正直言って、ここまで色々なアニメ3DCGIの会社にお手伝いいただけた要素としては、LightWave 3Dだからという点が大きいと思います。


トランスフォーマー ギャラクシーフォース

DS: 制作のフローについて、教えて下さい。

白井: 作品ごとに違うため、一概には言えません。プリプロダクションの段階で1年かけるものもあれば、いきなり入り、すぐに作って、すぐに終わらせなければならないものもあります。ですから、雛型になるものはありません。
「雪風」は長いスパンでやっていました。クオリティを優先させて工程は細分化されています。それを一つずつ確実に満たす形で進めてきたため時間もかかったしとても大変でした。TVだと、時間的な制約も多いので、工程毎ごとに必ず効率的な作成方法をスタッフと打ち合わせながら必要なものを吟味し進めていく事になります。

DS: では、「トランスフォーマー ギャラクシーフォース」のフローはどのような形でしたか?

白井: 「トランスフォーマー」に関しては、3Dの比率が多いため、演打ち(*1)をしてから3D処理打ちみたいなことを行ないました。つまり、3Dの処理を中心に行なう打ち合わせをするわけです。監督が、精度の高いコンテを仕上げてくれるため、3D処理打ちでの決め込みとコンテ内容によるカット製作を行なうことができました。

:*1 演出の打ち合わせ

DS: 取引先(外注先)とのデータの受け渡しに関して、そのときに注意したところなどありましたか?

白井: LightWave 3Dのコンテンツディレクトリを利用して、あらかじめ外のスタッフにも分かり易いようにデータを整理します。各ロボットがどこのディレクトリにあるか、といったことをまず最初に決めたり、それぞれのロボットのモデルには近景用や遠景用があるので、それぞれがどこに格納されるかみたいなことですね。

DS: 「トランスフォーマー ギャラクシーフォース」の、1話あたりのLightWave 3Dの総データ容量はどれくらいになりますか?

白井: 実際にハードディスクの容量を消費してしまうのは主に画像データなので、話数あたりでみるとテクスチャーや素材画像、キャラクターや背景等の合成用画像や納品画像で数十ギガを占拠する時も有ります。ただし、テクスチャー等を除いた3D作成用コンテンツデータ自体は実際それほど容量はいりません。特にLightWave 3Dはデータ容量が非常にコンパクトなため、そこも魅力的な長所の一つだと思います。


トランスフォーマー ギャラクシーフォース

DS: どのようなPCを利用していますか?

白井: 大体ですが、2.5GHz前後のデュアルCPU、メモリが2GBだと思います。
現在使用している作業用パソコンも型が違っていたり、型が同じでも内部構成が違う時も有るのですが、大体パソコンの使用は2・3年サイクルで使用交換している感じだと思います。レンダリングファームは、PCのブレードセンターを使用しています。こちらも、平均スペック準じた形で構成されていますが、性質上、ハードを統一した形で運用しています。

DS: セクションチーフディレクタはどのような仕事ですか?

白井: 作品ごとのスタッフの編成の調整やソフトやハードの運用にあたっての各タイトルラインごとの全体調整等がそれにあたります。GONZOでは同時に複数、3Dを使用するタイトルが動くので、各タイトルの動向に準じて、3Dディレクター以下のライン編成が行われます。その段階でのリソースとしての人数は、デジタルセクションの中でも限りもあるので、その配分を作品間またはディレクター間で協議するときに、取りまとめの役もします。

DS: プロジェクトによって異なると思いますが、制作期間はどれぐらいかけていますか?

白井: 最近はテレビの仕事が多く、2クールまたはそれ以上のタイトルが多いです。半年から1年、実放送期間があり、
それぞれの話に3Dのカットがどれだけあるかを逆算し、作品ごとに実働制作期間を割出します。

初回放送から最終話を納品するまでが実制作期間となりますので、準備に関しては、どれくらい早い段階で制作可能な状態にそのタイトルがあるかによって決まりますので、一概には言えません。本放送がのびることもありますし。(笑)
平均的には大体半年ぐらいが多いです。「トランスフォーマー」の制作が動き始めたのは本放送1月から数えること約半年、7月の段階でした。「トランスフォーマー」の主要キャラは48体でしたが、そのキャラクターがいつの段階で登場するかをあらかじめ決めてもらい、それを元に登場までに、この体数、といったかたちで作業の計画を立てていきます。初回から登場するものに関して優先的にモデリングに入りました。モーションのテストは8月の中旬からにテストを行い、それらの問題点も含めて順次必要な案件をまとめてくといった具合で制作が進んでいきます。

DS: 「戦闘妖精雪風」は制作にどれぐらいかかりましたか?

白井: 「雪風」は特別で、準備期間さえ、1年半ほどかかりました。他の番組が横でおわっていったくらい(笑)。
実際、制作終了が今年の7月末でしたので、足掛け4年以上制作にかかわっていたことになります。開発当初はまさかこんなにかかるとは思ってませんでしたが(笑)。OVAはテレビと違い、発売日から逆算して考えます。

DS: 最新作でなにかLightWave 3Dを利用して制作しているものはありますか?

白井: OVAですが、「マルドゥック・スクランブル」という小説のアニメ化に使用する予定です。このタイトルは、2003年の日本SF大賞を受賞された冲方 丁氏が原作のSF小説です。状況に応じて作画を使用しますが、基本的には3Dばっかりです。この作品では、LightWave 3DとMotionBuilderを併用する予定です。

 

トランスフォーマー ギャラクシーフォース

DS: 今後の視野としてフルCGの作品を多く作っていくということはありますか?

白井: 可能性はありますね、いろいろ問題はあるでしょうが。

DS: 2Dと3Dの合成で苦労されている点はありますか?

白井: 一言に”アニメ”といっても監督がイメージするものは多岐にわたるので(笑)。アニメと融合といいながらも、話を進めていくうちに最終的なビジュアルは水彩背景やマット画に近いものになったりすることもありますから。監督や演出と話し合った上で、両者が納得するビジュアルとして成立するものを適切に作成することが最も困難だと思います。アニメだから漠然と、セルシェーダ、と決めて、そのまま使ってるものもいくつかありますが、アニメの表現方法自体いろんなバリエーションが存在しますよね。

例えば、アニメ作品だからといって巨大な戦艦に、そのままセルシェーダをかけておしまいという作品もあります。しかし、既存の作品の中で巨大な戦艦自体の質感表現は、3D使用以前でも様々な方法論がとられており、その質感表現はとても多様だったりします。そんな例をふまえた上でタイトルに必要なものはなにか、なにができてなにができない、という話を重ねなければ、両者にとってどんなビジュアルイメージがそのタイトルに適切なのかを判断するのはとても難しいと思います。

自分も含めて人間っていうのは、求めるものはどうしても頭の中のイメージで漠然と話してしまうものですから。見たいやりたいだけで判断してしまうと、映像化するにあたっての前後が矛盾する場合もあります。ここも一番難しい部分でもあります。

DS: LightWave 3Dで一番お気に入りの機能は何でしょうか?

白井: モデラー全般。あとFXシリーズとハイパーボクセルはとても使用頻度が高いです。

DS: あなたの中で定番になっているLightWave 3DのPlug-inは何ですか?

白井: 上記と同様ですね

戦闘妖精雪風DS: 今までの制作に関わられた作品の中で思い出に残る作品は何ですか?また何ゆえそう思われたのかを教えてください。

白井: 「青の6号」のドリームキャストのゲームムービー(笑)。OVA本編はほとんど参加できなかったので(笑)。個人的に好きなジャンルで制作できたと思いました。後は「雪風」です(笑)

DS: 影響されたアーチストやクリエーターはいますか?

白井: 映像をやりたい、といった意識をもったのは、これは定番すぎて恥ずかしいんですが(笑)中学生時代に見た、リドリー・スコット監督の映画「ブレードランナー」です。これらの映画の絵の見せ方に影響されました。アニメでいえば小学生時代に見たマクロスの劇場版はビジュアルやディティール的なところで驚かされたりして。どちらもファーストインパクトということで、もう、見た目だけで引っ張られている感じで少し恐縮ですが(笑)その後はいろいろあげるときりがないくらいで、その時々ごとに様々、時代ごとに変わっていっています。結構影響うけやすいんで(笑)

DS: 最近印象に残った映画は?

白井: こういう仕事をしていると、逆にCGから逃げたくなるときがありますね(笑)。最近で心に残っているのは、ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の、「父、帰る」という映画です。CG一切なし、長回しの映画です。オール野外ロケ映像の中に満たされている空気感というか、スコンと抜けた密度感や緊張感みたいなものが独特でとても心地いいというか・・・もうとても感覚的なものなんですが・・・  うまく言えていないし、最近というにはちょっと間が開きすぎてますね(笑)スイマセン。

DS: これからこの業界を目指すかたにアドバイスを

白井: 作り手はいつだって作ったもの自体が履歴書になると思います。自分が手がける作品に対してはそのことを念頭に置いて、できるだけいいものを作れるようにがんばってください。

DS: 本日はどうもありがとうございました。


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